作曲家・富山優子 音に言葉

日々之音楽・思考・言葉

過ぎ行く夏

目が覚めた。夢は殆ど覚えていない。最近は午前8時にラジオが流れるようにしているんだけど、ベッドの中で気持ちが良くてついウトウトしながら聴いているうちにもう一度眠ってしまう。
夏の日光は強くて青く、ものの輪郭がにじんで溶け出しそうだ。からっと湿度が少ないのは嬉しい。
8月が半分終わった。夏ももうすぐ終わるだろう。秋になるだろう。冬が近づくだろう。私は何を作っているだろうか。

昨日はピアノでレコーディングに参加。人の作品に関わるのは本当に面白い。自分の作品だと、もう少し迷いが出てきそう、楽しむより前にシリアスに悩み始めてしまいそう。でも昨日は良かった。皆様お疲れさまでした。


お盆が終わった。今日は帰省ラッシュらしい。一日中、大量の物と人が移動するのだろう。
今年は里に帰らなかった。里、とはいっても生まれ育った場所ではない。要は親の実家のことである。思春期を過ぎた頃から実家に馴染まなくなり、休みとあらばやたらと里に行っていた。何をするともなくぶらぶらして、城の周りを散歩したり地元の温泉に入ったり大正琴を弾いたり本を読んだりしていた。そこで暮らした記憶など僅かな休暇でしか無いのに、懐かしいとすら思っていた。里に行きたかった。里に帰りたかった。帰る里が欲しかった。何処に居ても直ぐに居場所がわからなくなり、始終苛立たしく、長い間、帰る場所を探していたけど。
今年は里に帰らなかった。もう帰らないだろう。訪ねることはあるかもしれないが、帰るという感覚を持つことはないだろう。住居に帰る生活を続けるというだけのことだろう。わたしの住居に、わたし以外の人は居ないだろう。


過ぎ行く夏をぼんやり見送っていると、見知らぬ番号からの電話が鳴った。期限が過ぎているので図書館の本を返してください。先ずは借りているものを返さなくてはいけないようだ。