作曲家・富山優子 音に言葉

日々之音楽・思考・言葉

そういえば好きだった。

そういえばこの図書館が好きだったな、と思い出した。

 

正月が明けても、仕事始めまでに少し日があった。

ここ数年は通い詰めている職場近くの中央図書館が立派で、芸術関係の蔵書が多くて気に入っている、が、いまの家からは遠い。

 

インターネットで調べものをしているうちに読みたい本を見つけた。その本が近所の図書館においてあることがわかり、十数年ぶりに足を運んだ。

小さな小さな図書館である。ヒマな学生時代に全ての棚を眺め回していたので、どこの棚がどの分類か、案内板を見なくてもわかっている。そのくらい小さな第一図書館は十数年が経っても棚の配置は変わっていなかった。小説・エッセイのコーナーで立ち止まると、ほんの数分で読んでみたい本がたちまち腕の中に収まっていく。私の趣味はこの図書館で育まれたのであろう品揃えに驚く。

 

とにかくよく来ていた。時には小さな弟と紙芝居を借りて、私は登場人物になりきり声色を変えて熱心に読み聞かせたのだけれども、当の本人は反応が薄かった。

棚に並んだ背表紙を見ているだけで楽しかった。タイトルと字体と装丁で内容を想像して満足するところもあったし、実際には読まなかったとしても、いくらでも本が読める環境に安心できるのがまたよかった。

正月明けの静かな平日、学習コーナーでは暖房器具のわずかな動作音とページをめくる音がするばかり。

このかんじも、前と変わらない。

 

小さな公民館の小さな図書館。なにげない日常がトボけた文体でつづられたエッセイ。

そういうものが、そういえば好きだったな、と思い出した。

なぜ忘れていたのかは、まだ思い出せない。

 

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