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作曲家・富山優子 音に言葉

日々之音楽・思考・言葉

1月27日(水) いじきたなさ

意地汚い、というと何を思い浮かべるだろうか。

意地汚い=物欲が激しく、がつがつする。

食べ物に意地汚い、などの表現が一般的かと思う。

 

先日、「自分って意地汚いな」と思う場面に遭遇した。

月曜休館が多いが昨日は火曜日だったので、予約本を引き取るために読み終えた本を抱えてえいさほいさと図書館に向かった。ここの図書館は最近、利用者が自分で貸し出しの手続きをするシステムに変わった。コンビニなどでも似たようなシステムを見かけたことがある。レジ台にバーコード読み取り機があり、客が自分で商品のバーコード部分を読みこませて、プリペイドカードから代金を支払う、あれのようなものと思っていただきたい。

図書館がこのシステムに変わったとき、図書館の人は仕事が減ってしまったのではないかと勝手に心配したものだった。私が幼少時代に就きたかった職業は一位が看護婦、二位が図書館司書だった。当時は借りた本の裏表紙に返却日付のハンコを押してもらうシステムであり、軽快なテンポで大量の本にハンコを押していく司書さんが格好良く眩しく、憧れの的であった。国鉄で切符にハサミを入れる駅員さんに憧れたようなものだろう。その後、バーコードシステムが導入されてからも、「本のバーコードを読みこませてみたい」という願望を秘かに胸に秘めていた。セルフ貸出になってからは、利用者がカウンターの決められた枠内に本を積み、タッチパネルで操作する。回転寿司の皿を一気に読みこむシステムと同じ原理だと思うが、少し味気ない気もする。

ここの図書館には『予約本の小部屋』がある。ウェブから予約した書籍が市内の分館から小部屋に集められ、訪れた利用者が入り口でカードをかざすと予約本のリストが印字され、どの本がどの棚に置いてあるかがわかる。リストを見ながら自分で探し当てた本は、セルフ貸出機を操作して借りる。読み終えた本を館内の返却ボックスに入れると、ローラー滑り台のようなレーンを通って司書さんの居る場所へと戻っていく。このシステムだと、本を借りてから返すまで誰とも喋らない。なんだか味気ない。かといって、今までの方法であっても「はいどうも~」くらいしか口を開かなかったけど。

とにかく、こちらはやることがいっぱいある。昨日は、もう読んだことのある本を重複して予約してしまったことに気づいた。『予約本の小部屋』に到着する前の段階であればウェブで予約取り消しが出来るが、既に小部屋入りした本の場合は、一度借りてから返さなくてはならない。今日返す本、これから借りる本、一度借りてからすぐ返す本、それらを小脇に抱えてウロウロと徘徊し、ひとまず全ての手続きを終えた。

少し読んでいこうかなと閲覧席につき、本を確認すると、借りたはずの【自分的わりかし順位高め本】が一冊無い。この【わりかし順位高め本】は、「先日おなじ作家のエッセイを読んだら軽めで面白く、今回は移動中にさっと読めそうな文庫本にした」所がポイントである。ちょっとの合間に読みたい本。今ここで、閲覧席に半分だけ腰かけた状態で、あの軽めな本をパラパラとめくりたいのに・・・!! こういうの、あると思う。今この場所でこの分量の本をこの音楽とこのお茶とともに読みたいのだ!という欲求。「♪あの日あのときあの場所で、君に会えなかったら~」…突然に小田和正のヒットソングが頭をよぎる。いまここでパラパラしたいあの本は、おそらく間違えて返却ボックスに入れてしまったのだろう。無念・・・だが待て、一度返した本は、『返却されたばかりの棚』に並ぶはず・・・。『返却されたばかりの棚』を眺めるのも好きである。流行りの本や、誰かが読みたくて借りた本が並んでいる。知らない誰かの頭の中を覗きにいくようなものである。こんなことに興味を持っている人がいるのだな、とか、自分も同じく興味を持てる本が置いてあると少し嬉しい。忙しそうな司書さんが棚に本を並べるたびに、覗きに行く。私が返したほかの本は到着したが、肝心の本が来ない。・・・そうか、もしかしたら分館から取り寄せた本だったのかもしれない、それならば棚に並べず本来の分館に戻されるのだろう、ガーン・・・。棚を見張る作戦は失敗した。読みたければ、再度ウェブで予約をするべきだ。その場で直接訊いてみるのも気が引け、すごすごと帰った。

帰り道で初めての喫茶店に寄り、ラジオ録音を聴きながら借りた本を読んだ。それはたいそう面白くお茶も美味で優雅なひとときであったが、先ほど返してしまった本のことを頭の片隅ではずっと考えていた。やはり申し出るべきであったか、などと電車の中でも本のことを考えていた。他に借りた本に比べてとくべつ読みたかった本というわけでもないのに、いま読みたすぎて、本屋に駆け込んで買おうかとも考えた。後悔を引きずりながら、ポンコツ列車に揺られていた。

こんなにも一冊の本について意地汚い今日も平和です。