作曲家・富山優子 音に言葉

日々之音楽・思考・言葉

さくらももこさん おかしみをありがとう

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華やかなりし少女漫画の世界に登場したちびまる子ちゃんのビジュアルには驚かされた。少女漫画といえばキラキラ瞳に長い手足の登場人物が華麗に活躍する学園ラブコメが主流な時代に、こんな下手な絵が雑誌に載って良いのだろうかと子供心に心配していた。今でこそヘタウマという言い方があるが、少女漫画にそんなジャンルは見当たらなかった。内容は家庭のリアルあるあるで、まるで作者のプライヴェート空間を覗き見るかのような毒気と散りばめられたユーモアに段々と引きずり込まれ、最終的には単行本を全巻揃えるまでになったものだ。

 

下手な絵という意味では、岡田あーみんの『お父さんは心配症』も衝撃的だった。妙に色気のある気持ち悪さを感じたし、内容も滅茶苦茶だった。作者が女性だと知って、更に驚いた。単行本全巻持ってたけど。

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ちびまる子ちゃん』はテレビアニメ化されて、キャラクターはより輝きを増していく。花輪くん、永沢君、野口さん・・・誰もが個性的で、憎めない奴ばかり。イラストが独立した作品になり、極彩色の曼荼羅風になっていったのも印象的だった。

さくらももこのエッセイも大体読んだ。エッセイという読み物を教えてくれたのも、『もものかんづめ』『さるのこしかけ』あたりの作品だった。俵万智がけなげな女性の日常をせつせつと詠み上げ、吉本ばななが適度な倦怠感を身にまとって女心を呟いていた時代に、さくらももこは旦那のトランクスを履いて飲尿健康法にチャレンジしていた。なにもかもが型破り、こんな作家が他にいるだろうか、否。(さくらももこ風)

流星のように駆け抜けた時代の寵児は、そのまま振り返ることなく遠くへ行ってしまった。人々に必要とされた天性のユーモアは、いまもなお色あせずに作品の中で生き続けている。

 

Requiescat in Pace さくらももこさん おかしみをありがとう