作曲家・富山優子 音に言葉

日々之音楽・思考・言葉

耳が2つあるということ

 

ここ半年ばかりイヤフォンで音楽を聴くとき、若干左側が聴こえづらくなっていた。仕事で電話するとき左耳を使うから、少しずつ片側だけ聴力が落ちてきているんだ・・・。悲しかった。音楽は、少し右に寄って聴こえている。

そして先月、あるタイミングでイヤフォンの左側が聴こえたり全く聴こえなくなったりを繰り返すようになった。基盤部分に触れると突然聴こえたりする。

左耳が聞こえづらいのは、シンプルにイヤフォンの不調だった。急に直ることもあるので騙し騙し使っていたり、片側だけで聴いたりしていた。

そして遂に、左側から完全に音が出なくなった。替え時だ。これは演奏先の名古屋駅ビックカメラかどこかで買ったもの。もう5年は経っているから寿命だろう。

注文した新品が届くまで、片耳だけで音楽を聴いて過ごした。

 

そして新品が届いた。もと使っていた機種の後継機にあたる。こういう時に冒険をしない退屈な性格である。早速スマホとペアリングして、最近のお気に入りを再生した。

 

驚いた。

音楽が、まさに頭の中で鳴っている

 

場所を示すならば、眉間から耳にかけての頭蓋骨内で音楽が鳴っているように感じる。

アンバランスな状態で音楽を聴いていた時は、耳のすぐそばで音楽が鳴っているように聴こえていた。いま2つの耳で均等に音楽を聴いている状態だと、耳よりもっと遠くから音に包み込まれるような感覚である。イヤフォンやヘッドフォンを使って「音が耳の近くに張り付いているような状態」がストレスなのは、おそらく周りの危険を察知しづらいから身体が緊張してしまうんじゃないかとずっと考えていた。裸眼ならぬ裸耳で音楽を聴くのが気持ちいいのは、他の音も察知できるので安心できるからなんじゃないだろうか。

 

正しくチューニングされたイヤフォンは、鼓膜と音源の間に距離があるように聴けて随分と楽だ。もしかしたらイヤフォンで音楽を聴く機会がぐっと増えたから、後継機は耳から距離ができるよう疲れにくく作られているのかもしれない。パンニングで演奏者の距離が左右に振られているのが認識できるのは、耳が2つあるからこそ。そして自分の聴こえに左右差は無かったことがわかって一安心したアハ体験でした。