作曲家・富山優子 音に言葉

日々之音楽・思考・言葉

プレイヤー

こないだの日曜日、渋谷のロックオンカンパニーというお店に行って来ました。
このお店はデジタル楽器やマイクやソフトを輸入販売しています。私もハードの買い替えやらソフト音源の試聴やらで色々とお世話になっています。たまに無料セミナーが開催されて、プロツールスセミナーやソフト音源紹介セミナーなどやっているということは知っていました。
日曜日は、私が日頃お世話になっている高山博さんがピアノ音源のセミナーを担当するので、初めて聴きに行きました。

お店に着くと、高山さんがキーボードマガジンの編集長さんと編集スタッフさんを紹介してくださいました。「キーボードマガジン」略してキーマガ、って雑誌は基本的にロックやポップスのキーボーディストが読む雑誌だと私は思っているのですが、今年の春号はショパン特集が組まれ、私はその中の練習譜例を書かせていただいたのです。興味のあるかたは、スカパラさんが黄色い服で表紙を飾る2010年春号を見てみてください。ショパンのピアノテクニックは、こんなふうにキーボーディストの役に立つよ!っていう紹介特集でした。記事を書くにあたり、編集さんと電話やメールではやりとりしていましたが、直接お会いするのは初めてだったのでご挨拶出来てよかった!

そんなこんなでにぎにぎしく始まったセミナーは、Ustreamで配信されていました。Ustreamって最近流行ってるよね。はやぶさ君が燃え尽きる映像も配信されてたね。今回の音源聴き比べセミナーは、パソコンを使って、その中のソフトでピアノの種類を色々と切り替えて聴き比べるっていう内容でした。実際にヤマハだのスタインウェイだのベーゼンドルファーだの、ショールームでピアノを並べて試奏するのは大変だろうけど、それが全部パソコンで出来る光景にびっくり!しかも高山さんの説明で各種メーカーピアノの特徴を先ずは喋ってくれたあとにデモ演奏が行われるので、すごくわかりやすいし、単純に聴き比べが面白かった。高山さんはキーマガやサンレコ(←「サウンド&レコーディング」という音楽雑誌)でいつも良い文章を書いてらっしゃいます。それらの雑誌を読んでいて、「この人の文章はわかりやすいし親切だ。誰が書いたんだろう」という記事を見つけると高山さんの名前がクレジットされていた、ということが割と起こっていたので、私の中では既に高山さんのレビューや批評への信頼度が高いです。
それに加え、今回のデモ演奏は小川文明さんでした。小川さんのお名前は勿論知っていたのだけれども、小川さんの演奏した音源を聴いたことがあったのと、ある日友人から「これ読め」と手渡された「究極のキーボード練習帳」という世にも恐ろしげな名前の本の著者であることぐらいしか知りませんでした。生で演奏を見たのは今回が初めてで、私は生まれて初めて「プロの演奏を間近で見てしまった!!!!!」と思いました。例えば、前述の高山さんがピアノ音源を紹介する際に「このピアノは低音が良く出てるからゴスペルとか合うよね」と言うと、小川さんが「あ〜ゴスペルですね」と言いながら、そのようなフレーズをささっと弾けてしまう、ってなのアリ?ジャズのアドリブとも違うし、何これ?この人たち一体なんなの?ってかなり動揺して凝視してました。ていうかスタジオミュージシャンってそんな人ばっかなんですよねきっと。

でまぁ、セミナー自体はとても楽しかったし有意義であったのですが、それからしばらく落ち込んでいじけてました。そりゃ私はプレイヤー志向ではないですけど、あまりにも違いすぎる。自分では少しイケてるつもりだったけど、全然だめじゃん・・・月とスッポンどころか月とイモムシだよ、私はイモムシ・・・嗚呼恥ずかしい!ぐれてやる!!みんな今までごめんなさい!!!・・・ため息が止まらずに、ただの深呼吸になっていました。2回開催予定のセミナー第1回目が終わり、あいだの時間に高山さんと小川さんがお茶に連れてってくれたのを絶好のチャンスとばかり、興奮のあまりほぼ食ってかかるに等しい勢いで小川さんに色々質問というか詰問してました。その中で一番私の中に残ったことがあって、色々な話の流れを省いて結論だけ言うと、その話を聞いたあと私はガビーンとショックを受け、涙ながらに「私、バンドやりたい!」と言ったのです。

週明けてもショックをひきずったまま簡単にはため息が止まらなく、職場の女子に「私はいま、とてもショックを受けている」みたいなことを訴えて同情を買おうともしていました。が、いっこうに気分は晴れないどころか落ちて行く一方なので、ロックピアノの動画を見たり、セミナーの様子を思い出して似たようなのを弾いてみようとしたり、自分の曲をロックピアノで弾いたらどうなるか、とか練習時間内にやっていたら、もしかしたらカッコよくピアノが弾けるんじゃないかという気になってきて、ピアノという楽器が今までと違うものに見えて来ました。いまんとこ架空なんだけど、バンドのアンサンブルやリズムのことを考えるのが楽しいなぁと少しだけ思って、帰ってきてオアシスを聴いたら相当カッコよくて神かと思いました。つづく。