作曲家・富山優子 音に言葉

日々之音楽・思考・言葉

炒まる世界

元来、油めいたものが余り好きではなく、料理をするといえば煮るか茹でるかを続けて来た私であったが、ふと思い立って今夜は炒めてみた。生涯にわたり炒めた回数は両手の指で足りるであろう私がである。すると驚いたことに炒めたものは美味しく、しかも茹でるより短時間で仕上がってしまった。余りの衝撃に声も出ず、箸を置くや否やインターネットで炒め物を調べてみたところ、それはそれは種々様々な炒め物が次から次へと表示されるではないか。まるで、この世に炒めてはならない食材など無いかのように。脳内で食材の組み合わせは既に無限で、完全にキャパシティを超えてパンクしたまんまの思考回路を放置してウットリしている。今後、マーケットを訪れた際には炒める組み合わせについてしか考えられない気がしている。しばらく思いつくままに炒めてみよう。
(そういえば、人が初めて加熱料理をしたのは、どういう形態だったんだろう。茹でるには器が必要だし、炒めるには焼けない板が必要だから大変そうだ。きっと食材を棒にさして火で炙ったのだろう。)

新しさ、とはきっと、目新しいものに次から次へと移り変わることではなく、自分と対象との関わり方を変えるということだと思う。例えば、今まで茹でていたものを炒め始めるように。関わり方を新しく選択し直すことは、きっといつだって可能だ。新しく選択出来ること自体が喜びとなるだけでなく、新しいものがより良いものとなれば尚のこと、好奇心の材料が増える。小さな事例ではあるが、もっと広い範囲のことに繋がっているように見えている。世界は既に存在している。新しい世界を探すのではなく、世界との新しい関係を探していこう。




BGM:
アフロ・キューバン・オールスターズ ”Distinto, Diferente”
フジファブリック ”CHRONICLE”