作曲家・富山優子 音に言葉

日々之音楽・思考・言葉

Portrait in JAZZ ~音の記憶~

ビル・エヴァンスに同名のアルバムCDがあるが、そのことではない。

音楽と記憶についての話。

 


Fred Hersch - Heartsong - YouTube

 

また最近よく聴いているFRED HERSCHのジャズ・ピアノ、これらを聴くとわたしは、原曲とは直接関係は無い、ある状況を思い出す。

束の間の家族で訪れた薄暗いジャズバーでのピアノトリオ、旅先のニューヨークで知人家族に連れて行っ てもらったジャズバーでのピアノトリオ、初めてジャズ・ピアノを教えてくれた家族経営の音楽教室が主 催する合宿・・・なぜかいつも、実体験のジャズには家族と沢山の人間が登場する。
それらの記憶は遠いが、ジャズ・ピアノを聴くとたちまち、擦れたモノクロの葉書が現実よりも鮮明に浮か びあがる。

 

知人と他人がひとかたまりの疑似家族となり、安心してひとときを過ごしている時間、それが私にとって のジャズ・ピアノ。どんな曲調であれ、たとえば正月にこたつで一家が集まっているひとときのぬるさに似ている。
あれはなんなんだろう、たまたまの体験がそう結びついていただけなのか、ジャズ・ピアノそのものが現象を呼び寄せてしまうのか、真偽はともかく、音楽が呼び起こす記憶は強烈で自動的だ。


音とともに当時の残像が甦る。会場は薄暗くて、そこに集う人たちの顔はハッキリとは見えないが、感傷に満ちた記憶の残像を私の脳裏は久しぶりに再生した。音の記憶で、生き延びている。音は記憶を、現実以上にする。