作曲家・富山優子 音に言葉

日々之音楽・思考・言葉

悩みも楽しむしかない。

仕事ばかりしている場合ではない、曲を書こう。

と思ったのが先月末。

人間は、やろうやろうと思うだけでなかなかやらない生き物だから、

やると宣言して自分を追い込んだらいいじゃない!と考え、

「今年中に新曲を録る!」と、SNSの小さなコミュニティでだけ宣言を行なった。

 

今年中といえども残り1ヶ月の中で、働きながら新曲を作ってブラッシュアップして録るまで終えるのはきつい。

とはいえ、勝算があったから宣言したのである。

石橋を叩いて、なかなか渡らないタイプ。

ちょうど年末に、とある方と合同で作品を録る予定になっていて、

「そこでは新曲が2曲は必要なんだけど、まだ作ってないや〜」と余裕に見せかけて内心は少し焦っていた。そこにハッパをかける意味合いもあって、先の宣言に至る。

 

やると決めたら動きは速く、1週間もしたら2曲が出来た。1週間で出来た、とはいえ、今まで内面に蓄積したものが表出したと考えれば、蓄積1年作業1週間といえなくもない。

 

なんというか経験を重ねるごとに慎重になるものだと思いませんか?初めの頃は勢いやフレッシュさもあって、書けた曲は振り返ることなく発表してきたものですが、経験や知識が増えるに従い徐々に残された領域が狭くなっていくというか・・・。これって既存のアレみたいかも?これって面白いのかな?そんなふうに心の声に惑わされると、文字通り手も足も出なくなってきて、とても苦しくなる。知識と経験をそのままに、過去の自己曲を忘れてしまいたい!

毎日こつこつと書いてコンスタントに発表している作家さんって、そのあたりをどう思っているのか気になる。「また同じ言い回しを使ってしまった」なんて考え自体が、どうでもいいことだったりするんだろうか。

 

そのあたりを実感するためにも、いつまでも作り続けるしかないんだろうなーと思いつつ、年末の録音の準備を引き続き行うのであった。悩みも楽しむしかない。

 

放置してしまったブログに多少の文字を

最近どうにも文章を書こうと思う気持ちが薄れていて、なんでかなと振り返ってみた。

思えば今年度から始めた仕事では、人生を聞き取って記録することを大量にやっている。

他人の書いた情報を読むことも多くて、無駄を削ぎ落とされた文章にまみれて生きている。

 

情報量は多いけど、言葉のニュアンスに触れることが少なくなったと感じる。

自分が今まで書きたかった文章とは、情報ではなかったようだ。感覚や感情を、なんとかして文章化したくてジタバタする努力が、好きだったんだろうと思う。

最近は特に、複数のSNSに文字や写真を分散させて載せて、それで満足しちゃっているのかもしれない。よくないわ。

あと書店に行って本を手に取ってみても、すぐに結論を書いてほしいと思ってしまう。Youtubeで本の要約を観ても、要点以外は飛ばしてしまうし。

知識のファスト化だ。やばいじゃん。

 

動画や写真じゃなくて文字を書くにあたり、リズムや音韻を楽しみながら書いたり読んだりしていたはずなのにね。いつのまにか知識の授受になっていたのかな。

 

noteというツールも使ってみたことがあったけど、あんまり続かなかった。有料化とか、カテゴリランキングとか、知らないうちに枠に入れられ競わされる感じがした。

結局、自分の手が届く範囲でマイペースにやるのが気楽なのかもしれない。ここのブログみたいに。

 

なんの結論にも達してないけど、今日はひとまず自分の文章を書く練習ということで。

なんでもそうだよ。やらなきゃ出来なくなるし忘れるんだ。毎日のように教科書を読まされていた頃は文章も書けて当然。書いてなければ書けなくなって当然。

また気が向いたら書きます。

昨日見た映画『フェイブルマンズ』

月に春霞。たぶん花粉。映画終わりに夜道をそぞろ歩き、すまぁとふぉんを覗き込む。

きのう観た『フェイブルマンズ』が、けっこう面白かった。スピルバーグの自伝的映画と聞いていたので輝かしい活躍を見せるかと思いきや、出自にまつわる影の部分だったり、家庭内問題だったりを経験しながら映画に惹かれていく過程を描き、なんだかんだでこれからハリウッドで働くぞ!と期待に満ちた場面で終わった。

 

主人公は『映画に取り憑かれた』とか『他のことに興味なし』などの天才系でもなくて、一般への適応障害やトラウマからのパニック障害をもち、他の選択肢を排除した結果、致し方なく映画を志したように見えた。青年になるまでに彼が経験した家族問題やエディプスコンプレックスは、のちの作品に埋め込まれ、スタイリッシュなビジュアルと相まって、観客の深層的無意識を揺さぶってくる。

スピルバーグにとって映画作品を作ることは、忘れたいくらい苦しいのに忘れられないほど甘ったるい青年時代までの断片を追い続けることだったのかな、となんとなく感じた。それくらい母親がエキセントリックで憎たらしいほど魅力的に描かれる。

ものを作る人を題材にした作品は面白い。深層と表層。わたしたちの目には表層しか見えないけれど、読み取って考えるうち深層に触れる。それは少し正しかったりする。

劇場で観た映画2022まとめ


年末年始には
1年で観た映画をまとめているのですが、ちょっと忙しくしていて2022年の分が出来ていませんでした。本日は旧正月ということで、まだ間に合うかと思いまとめます。

新年もよろしくお願いします!

 

自分の好きポイントをカッコ内に書きました。

もう一度観たい映画は、作品名に印を付けました。

 

【劇場で観た映画2022

明け方の若者たち(北村匠海

ユンヒへ(韓国の何気ない街並み)

決戦は日曜日(懐かしセンス)

99.9 刑事専門弁護士

世界で1番美しい少年(お爺さんになっても存在感やば)

https://note.com/ytomiyama/n/nd96f9404fdf0

コンフィデンスマンJP 英雄編(このシリーズなんか観ちゃう)

ハウス・オブ・グッチ(アダム・ドライバーの色気)

クライ・マッチョ(クリント・イーストウッドとニワトリの共演)

https://note.com/ytomiyama/n/n86ec229f20e9

スティルウォーター

●Coda コーダ(!!!)

https://note.com/ytomiyama/n/n9f4cfefdf79d

香川1区(小川淳也議員のドキュメンタリー『なぜ君は総理大臣になれないのか』の続編)

ノイズ(藤原竜也×松山ケンイチ

さがす

フレンチ・ディスパッチ

https://note.com/ytomiyama/n/ncff0233e6d07

前科者(有村架純が保護司に)

名付けようのない踊り(田中泯

https://note.com/ytomiyama/n/nc07e37fc4556

ゴーストバスターズ アフターライフ

355

声もなく

ちょっと思い出しただけ

エスト・サイド・ストーリー

https://note.com/ytomiyama/n/n0082158086b1

余命10

ファーザー

シラノ

ドリームプラン(テニスプレイヤーのセリーナ・ウィリアムズ姉妹を育てた父)

イングリッシュ・ペイシェント

偶然と想像

とんび(北村匠海!)

ザ・バットマン

パワー・オブ・ザ・ドッグ

リング・ワンダリング(音楽担当やってます!)

ナイトメア・アリー

オッドタクシー インザウッズ

やがて海へと届く(岸井ゆきの×浜辺美波。すき。)

ゴッドファーザー PART II

今はちょっと、ついてないだけ

ゴッドファーザー 最終章

カモン カモン(ホアキン・フェニックスと子供)

劇場版ラジエーションハウス

いつも2人で

英雄の証明

死刑にいたる病

流浪の月(広瀬すず×松坂桃李!)

ハケンアニメ!(中村倫也!)

シン・ウルトラマン

オフィサー・アンド・スパイ

冬薔薇(ふゆそうび)

FLEE フリー

はい、泳げません(PTSD

ベイビー・ブローカー

バスカヴィル家の犬 シャーロック

三姉妹

ゆるキャン

ブレードランナー4kマスター)

わたしは最悪。

ビリーバーズ(新興宗教磯村勇斗!)

教育と愛国

ナワリヌイ

●PLAN75(磯村!)

https://note.com/ytomiyama/n/nd2276a108913

ギルバート・グレイプ(知的障害児を演じる若きディカプリオ)

恋する惑星

TANG タング

サバカン(ノスタりたいなら、これ)

NOPE ノープ(廃遊園地を襲う謎の未確認飛行物体)

ブレット・トレイン(ブラッド・ピット、未来の日本に来てくれてありがとう!)

さかなのこ(のんの魅力)

沈黙のパレード

よだかの片思い((not)HEROINE moviesの企画、いいよね)

川っぺりムコリッタ(ムロツヨシ

ヘルドッグス(岡田准一×坂口健太郎!)

マイ・ブロークン・マリコ(あるいみPTSD

●7人の秘書(このシリーズ眼福)

秘密の森の、その向こう(「子供の頃の記憶を大切にしよう」という気持ちになる)

スペンサー・ダイアナの決意

大間荘の三姉妹(のん)

●LAMB/ラム(変な映画。すき)

ドント・ウォーリー・ダーリン(予言的暗黒未来?)

ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー(涙なしに観れん)

ある男(窪田正孝!)

サイレント・ナイト(恣意的)

アフター・ヤン(坂本龍一の音楽っていうか音×ととのう映画)

母性(小説読んでから観に行った。こわ!)

●THE FIRST SLAMDUNK宮城リョータの魅力に開眼)

宮松と山下(哲学的な香川照之

ラーゲリより愛を込めて(松坂桃李の役どころ!)

アバター・ウェイ・オブ・ウォーター(VRは、これでいい)

Dr.コトー診療所

ケイコ 目を澄ませて(硬派な岸井ゆきの!)

あのこと

かがみの孤城(優里の歌に開眼)

すずめの戸締まり(椅子!)

天上の花(三好達治×萩原朔太郎の妹)

夜、鳥たちが啼く

 

記録していたのは、93作品でした。今年は少し少なめ・・・。他にもばんばん新作は公開されていて、全部網羅するのは不可能だけど、これからも映画ラバーとして映画館に足を運びます。

たまに劇場で上映する旧作の中でも『ギルバート・グレイプ』を観られたのは良かったな。

 

2021年の観賞履歴】

https://ytomiyama.hatenablog.com/entry/2022/01/03/145442

 

#映画 #観賞 #履歴

映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』観た。

エンニオ・モリコーネの作品集ボックスセットを聴いていると混乱する。『ニューシネマパラダイス』のようなロマン派クラシックの音楽と、『荒野の用心棒』のようなマカロニ・ウェスタンの音楽と、特殊奏法を実験する現代音楽とが、時系列上でごっちゃになって提示される。全然違う音楽世界を、どうやって行き来しているんだろう?とずっと思っていた。
その疑問が少し解けたドキュメンタリー映画
 人から求められるものと、自分のやりたいことを、どちらも譲らず共存させていった作曲家だと感じた。アカデミアの世界から色眼鏡で見られても世俗的な音楽をやることを恐れず、大衆から批判されても聴きづらい現代音楽を映画に持ち込む。確かに、映画でよく知られているモリコーネのユーモラスな音楽や美しい音楽を期待して映画を見始めると、最初の1時間ほどは随分と違う性質の音楽の話なので、苦痛かもしれないです。しかしそれらが後の礎となっていく過程が面白い。集団即興のシーンもあります。
モリコーネの映画音楽はいつも、それだけで独立した楽曲なので、映像とMAと音楽が並走していくのが対位法のように立体的。よっぽど音楽に精通している監督とやっていたのか、と思いきや、長くタッグを組んでいたセルジオ・レオーネ監督は、脚本を書く段階から音楽を依頼していたという。早い、早すぎる。ていうかモリコーネ頼み。そして音楽が映像よりも先に出来て、撮影現場で音楽を流しながら演技をしてもらうシーンにはびっくりした。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』でカメラが回り、セットに入ると音楽がうっすら流れていて、困惑するロバート・デ・ニーロ。ほかにも『ミッション』では超有名曲『ガブリエルのオーボエ』を劇中で役者がたどたどしく演奏したりと、モリコーネの音楽を主軸に据えた映画作り。特定の役者を想定して脚本を書く「当て書き」ならぬ、音楽先行の「当て撮り」って、もはやモリコーネのPVじゃないですか?その方法で作ったから、あんなにも音楽と映像が関連しあって(カートゥンみたいにシンクロするわけではないのも、また面白い)構築できたのかなーとか色々考えました。
映画の付帯音楽じゃなくて、モリコーネの音楽をやりたくて、ずっとやっていた人。作曲の着想を脚本や役者や映像から得て、それぞれの世界観に音で入っていった。音楽のスタイルは様々に、それぞれが独立した楽曲として残った。しかし演奏会で曲を聴くだけで、映画のシーンが脳裏に浮かんでくる。エンドロールが終わっても、映画作品とモリコーネは強くしっかりと抱き合って、離れることはない。